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2020.04.19 Sunday

溶解 12

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    「・・・辛かったから、見たくなかったんだよね・・・。」

    「ううん・・・、なかったことにしたかった・・・っていうか・・・。冷たかったね・・・。ちゃんとしっかり見て門出を祝福してあげれば良かった・・・。」

    「・・・」

    「・・・それだけは後悔してる・・・。もっと大人な対応できれば良かった・・・。」

    「・・・十分、よく頑張ったよ・・・、奈津美は・・・。大人な対応なんて、正解、ないから・・・。」

    「ありがとう・・・、お姉ちゃん・・・。」

    「・・・三日間だけど、みんなから愛されて旅立っていったね・・・。」

    「ありがとう・・・。陵ちゃん・・・、どことなく、孝司さんに似てる・・・みたい・・・。今、改めて見ると・・・。」

    「・・・そっか・・・。パパだものね・・・。」

    「・・・」

    「・・・」

    「・・・写真、渡してくれてありがと・・・。とりあえず、家に持って帰って・・・、どうするか決める・・・。」

    「うん・・・。大丈夫?辛くない?平気?・・・」

    「・・・うん、平気・・・。・・・なんか嬉しい・・・。写真、あってよかった・・・。」

    「・・・そっか・・・。・・・多分だけど・・・、お父さん、奈津美が落ち着いたら見せるつもりだったんじゃないかな・・・。棚の奥に入れて、あえて隠してたのかもね・・・。でも、お父さん、先に死んじゃったから・・・、お母さんがこの間見つけるまでそのままで・・・。」

    「・・・うん・・・、きっとそうだね・・・。」

    「お父さんが言ったんだよね・・・『三日しかいないけど、名前をつけてあげな・・・』って・・・。それで、奈津美が『陵』って決めて・・・。」

    「うん・・・。」

    「・・・ね・・・。そしたら、その後、2月に生まれたうちの子に、だんなが諒って名前つけて、ほんとびっくりしたよねー!」

    「うん、驚いた。」

    「・・・これも何かの縁って思ってつけたけど、奈津美にはつらい想いさせちゃったね・・・。呼び名が同じで・・・。」

    「ううん・・・。そんなことない・・・。逆に、諒ちゃんの存在にどれだけ救われたか・・・。」

    「・・・」

    「・・・あたしね、お姉ちゃんちに諒ちゃんが生まれてなかったら・・・、多分、ほんとに世の中を恨んで、死んだ孝司さんも恨んで・・・、ほんとの自律神経失調症になって、短大に復帰しないで中退しちゃったと思う・・・。」

    「・・・・」

    「・・・お姉ちゃんに諒ちゃんが生まれて、産後、うちに里帰りしたじゃない?あの時、まーちゃんのお世話をしてたら、母性が芽生えたっていうか・・・、諒ちゃんもとても可愛かったし・・・。お姉ちゃんの子どもっていう安心感っていうか、冷静に客観的に見れたっていうか・・・、普通の思考に戻れたんだよね・・・。孝司さんを恨んでる暇があるなら、お姉ちゃんの代わりにまーちゃんを立派に育てて、まーちゃんから尊敬されるように短大も頑張って卒業して・・・!ってすごく前向きになれたの。微熱が急に止まっちゃってね!・・・。」

    「そうだったんだ・・・。」

    「お母さんが留守で、お姉ちゃんが疲れて寝てる時、泣いてる諒ちゃんにこっそり母乳あげたことあったし・・・。」

    「そーだったんだ?!ありがと!」

    「抱っこしてたら、なんか胸が張って、お乳が出てきたんだよねー!びっくりした!陵の時は、初乳あげただけで、全然出なかったのにー。嘘みたい!って思った!」

    「へー!そんな事がねー!」

    「・・・えへへ・・・。諒ちゃんのおかげ・・・。まーちゃんとお姉ちゃんと・・・!お世話になりました!」

    「いえいえ、とんでもないです・・・。こちらこそお世話になりました・。・・・でも、良かったね・・・。1年留年したけど、無事卒業できて・・・。」

    「うん・・・。ほんと良かった・・・。」

    「・・・」

    「・・・」

    「・・・奈津美は・・・、孝司さんの事・・・、今も恨んでる?・・・」

    「・・・今はもう全然・・・。・・・逆に、若くして亡くなってお気の毒・・・って思う・・・。全然元気だったのに大学の休みに実家に帰って突然心筋梗塞で・・だものね・・・。21歳じゃ・・・、本人も、無念だよね・・・。」

    「・・・」

    「・・・お墓参りして、思いっきり愚痴をぶちまけようって思ってたけど・・・。お墓の場所を書いたメモ、なくなっちゃったの・・・。だから、これはもう、いいんだ・・・終わったんだって解釈して、解放しよう・・・とか、解放されよう・・・とか、良い風に受け止めた。」

    「・・・」

    「・・・生きてたら、結婚してたかも・・・、とか、子どもができたって知った途端ふられたかも、とか・・・。いろいろ想像したけど・・・、もうね、どうでも良くなった。」

    「・・・」

    「お姉ちゃんが、特別養子って手があるから!って調べてくれて・・・、あの子の命、つないでくれたから・・・。」

    「・・・」

    「・・・あたしも、ごめんね・・・。黙ってて・・・。中絶できない時期になっちゃって・・・。もしかしたら妊娠・・・って思ったけど、絶対違う!って打ち消してたら、時間が経っちゃって・・・。」

    「・・・」

    「諒ちゃんを妊娠してるお姉ちゃんの様子を見てたら、これは絶対妊娠してる・・・って確信して、泣きながらお姉ちゃんに打ち明けたんだよね・・・。」

    「・・・ほんとにつらかったよね・・・。孝司さんと連絡がとれないと思ってたら、実家に帰省中に亡くなって、お葬式も済んでたなんてね・・・。そのあと、妊娠に気づいたんだものね・・・。ほんと、悲劇だよね・・・。」


    2020.04.25 Saturday

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